おすすめの年齢:2歳〜大人
しろねこしろちゃん(2歳)のあらすじ
黒猫のお母さん、黒猫の兄弟。どうして、自分だけが白猫なの。ある時、白猫の「しろちゃん」は自分だけが真っ白いことに気がつきました。しろちゃんは、「どうして、ぼくだけ?」と、白い身体を黒くしようと転がったり、毛を擦りつけてみましたが、やっぱり白いのです。
ある日、お母さんが、「今日、お父さんが帰ってくるから」と、子どもたちに言いました。みんな、大喜びです。でも、しろちゃんは、自分だけが白いので、恥ずかしくなって家を抜け出しました。
しろちゃんは、家を出た後、真っ白い大きな猫を見かけます。大きくて、しろちゃんの何倍もあります。しろちゃんは、なんだか嬉しくなって、大きな白猫の後をつい行きました。なんと、大きな猫は、しろちゃんの家の前で止まりました。
そうです、それがお父さんだったのです。
黒猫の兄弟たちも大喜び。お父さんが「これで全部かね」と訊くと、お母さんが「お父さんの後ろに、しろちゃんが」と言いました。
真っ白なしろちゃんを見たお父さんは、とても嬉しそうでした。でも、もっと嬉しかったのは、他でもない、しろちゃんでした。
しろねこしろちゃん(2歳)の感想
小学校に上がる前の、親戚の男の子(6歳)に読み聞かせしました。この絵本は、幼児絵本シリーズで、2〜4歳向きと書いてありますが、6歳でも十分、味わえる絵本です。用事だけではありません、大人でも十分に味わうことができる絵本です。
文章は、森 佐智子、絵はMAYA MAXが手掛けています。本文には温かみがあり、すみずみにゆったりとした時間が流れ、それでいて、子ども自身が最初に抱くであろう問いに正面から向き合っています。
6歳男児は、まず絵本の表紙である「しろねこ しろちゃん」に惚れました。MAYA MAXの描く猫の、たどたどしい武骨な絵は、大人が見ても、子どもが見ても、心を奪われるような大胆な可愛らしさが漂っています。
「じぶんは、どこからきたのか」「じぶんはだれなのか」「ほかとは、あきらかにちがうじぶんは、だれ」という最初のアイデンティティにかかわる問いが、この絵本の主題だと言えますが、6歳男児はしろちゃんの疎外感を「クスッ」と笑っていました。おそらく、それは共感する自分を誤魔化すための笑いだったかもしれません。
身体を黒くして、他の兄弟猫と同じようになろうと一生懸命なしろちゃん。黒猫の家族に、真っ白である自分。他者とは違う「自分」というものが芽生え、問いをもち、いたたまれない感情に突き動かされて、しろちゃんは家をこっそり抜け出します。さすがに、その部分では、男児は「しろちゃん、かわいそう」と言いました。
しろちゃんが大きな白猫を見つけた時、それがお父さんだと分かった時、「ああ、やっぱり」と男児は声をあげましたが、それは「予想どおりで、つまらない」ということではなく、「本当に、よかったね、しろちゃん」という、しろちゃんの不安の解消と、共感しながら喜ぶ声だと感じました。
お母さんの「子ども」だということ、お父さんの「子ども」だということ、みんなとは「違う」ということ。そういうことが絵本の中にソフトに描かれていますが、絵本のメッセージが前面に出てしまうようなことはなく、むしろ、絵の可愛らしさに共感しつつ、「家族っていいな」と考える契機になったのではないかと思います。
6歳男児は、読み終えた後に、絵本裏表紙を撫でながら言いました。
「しろちゃん、よかったね」と。本当です、安心できる場所があるって、いいなと、読み聞かせをしながら、私も思いました。
絵本裏表紙にある寄り添う5匹の猫家族、本当に幸せそうです。